消えた戸籍を追う!
現在の最も新しい様式の戸籍はコンピューター化されていますが、それよりも古い時代のものは紙の戸籍用紙が使われていました。
古い戸籍を申請すると、役場のかたがその当時の紙の戸籍を簿冊からだしてきてコピーをし、それに役場の認証印を押印して発行するのがこれまでの通常のやりかたでした。これまでの、と書きましたが現在でもこのやり方をしている役所もございます。
しかし現在ほとんどの役所では古い紙の戸籍をスキャナーで読み取り済みで、データとしてパソコンに保管されるようになりました。 つまり、紙の戸籍は一応存在するものの使用されることはなく保管されており、実際にはデータを印刷して戸籍を発行しています。
戸籍をデータとして扱うようになってからは、古い戸籍の申請でも比較的短時間で発行していただくことが出来るようになりました。
その昔、私がまだ駆け出しだった頃、古い戸籍を窓口に申請しに行くと発行までに数時間を要したことも普通にありました。
実はごくまれにではございますが、紙の戸籍からデータへと移行した際に移行漏れがあることもございます。
つまり、紙としての戸籍は存在するものの役所のパソコンには戸籍のデータが入っていないということです。
戸籍が見つからない…
家系図作成のために古い戸籍をさかのぼっている案件がありました。
その案件においてどうやら移行漏れがあったらしく、データ化された戸籍が見つからないとのこと。その役所では保存期間満了により廃棄された記録もないので、本当にどうやら移行漏れのようです。
紙の戸籍が見つからないとなったらそれこそ一大事となってしまいますし、せっかく過去に廃棄のなかった役所なのに江戸末期出生のご先祖様までさかのぼれなくなってしまいます。
紙の戸籍を調べ直すのは多大な労力を要することは想像できますが、「見つかりました!」という役所からの吉報を待っていました
見つかることを願いつつ役所からの連絡を待っていたのですが、その結果は…。
「見あたりません!」というものでした。
ちょっとショックを受けましたが、戸籍はその副本が法務局に保管されています。その副本を使ってなんとか古い戸籍が再製できないものかとすぐに思いつきました。
今回の案件の古い戸籍が除籍となったのは大正時代。現行法上は除籍の保存期間は150年ですが、数年前までは80年でした。保存期間満了により廃棄された戸籍は、たとえ副本が法務局にあろうとも再製をしてくれることはありません。
今回の戸籍は除籍後既に80年を経過していますが、役所のかたがおっしゃるには保存期間満了により廃棄されたものではありません。
数年前までの80年保管時代に80年が経過していたとしても、廃棄されることなく150年保管へと移行したのですから、おそらくは再製してくれるものだと思いました。
役場の担当者だけでは判断できないとのことで、法務局との相談後に結果をご連絡いただけることになりました。ですが、確認をするにはどうしても時間がかかってしまうとのこと。
あまりに長時間かかってしまうとご依頼人様にもご迷惑がかかってしまいますが、それでも江戸末期出生のご先祖様までさかのぼれることを第一に私も取り組んでいきたいと思っておりました。
その後しばらく経ち、役場の担当者のかたから連絡がありました。役場の担当者が法務局と相談し、古い戸籍を再製していただけることになったとのことです。
これで一安心!かと思いきや、よくよくお話しを聞いてみると、紛失した戸籍と全く同じ戸籍は法務局にもないとのこと。
私の理解の中では、役所にある戸籍とまったく同一のものが常に法務局にも保管されているものだと思っていました。今回の戸籍は確かに数年前に除籍後80年を経過しているので、保存期間が150年に延長される以前に法務局保管の副本のみ廃棄されてしまったのかまではわかりません。
とにかく、その紛失した戸籍とまったく同一のものは法務局には存在しないとのことでした。これでは戸籍の再製のしようがないと思われますが、役場の担当者がおっしゃるには戸籍を再製できるとのこと。
では、どのように再製がなされるのか?
結論から申し上げると、副本を使った再製方法のように完全には再製することが出来ないようです。こういった場合の再製方法はいくつかの情報を複合的にまとめ、再製がなされるようです。
戸籍の再製方法
(1)戸籍申請書記載事項をもとに再製
紛失した戸籍がまだ除籍される以前の効力を有していた時期に申請された戸籍申請書記載の情報があれば、戸籍に記載されていたであろうある程度の情報がわかります。
(2)前後の戸籍情報
今回紛失したものより新しい時代の戸籍は存在していますが、そこに記載されている情報を使って戸籍を再製するようです。
今回紛失した戸籍よりも古いものがあるのかどうか、そもそも存在したのかは、紛失した戸籍から追わなければならない情報なのでわかりません。
(3)戸籍への出入りの情報
紛失した戸籍が効力を有していた期間に、婚姻や分家などで他の戸籍へと出て行かれた方々の情報を追いかけたり、逆に離婚や離縁、廃家などで他の戸籍から入ってこられた方々の直前の情報を使うようです。
(4)親族調査からの情報
戸籍記載の子孫の方々からの情報、たとえば墓石や位牌に記載されているお名前や出生死亡日など、参考程度なのかもしれませんがこういった情報も使用するそうです。
以上のような方法を使って戸籍の再製がなされるというのですが、法務局の副本を使うという通常おこなわれる方法よりもはるかに手間がかかりそうです。
再製がなされるまでの期間は、概算ですが最短でもなんと6ヶ月と言われてしまいました。
今回は家系図作成のための戸籍収集ですから、それでは私もご依頼人様もちょっと困ってしまいます。そこで私が役所のかたにとある方法をお願いいたしました。
戸籍受付帳と届出書
戸籍再製に代わる方法として私が考えた方法は、「戸籍受付帳」と「戸籍に関する届出書」のコピーを入手する方法でした。とても古いものでしたが、幸いなことにこちらは保管されておりました。
届出書のコピーと言いましても、行政証明書の一種でありますので費用もかかりますし、認証印も押印されています。
通常、こういったものの写しは入手できないのかもしれませんが、直系尊属の子孫であることと戸籍が紛失した事案であったために取得することができたのかもしれません。
発行出来る出来ないについての根拠は戸籍法や戸籍法施行規則などに書かれているかもしれませんので、今後に調査してみたいと思っています。
今回は戸籍再製に至らずとも、ご依頼人様の直系尊属に関してだけは必要な情報を得ることができました。しかし、紛失していなければ得られていたであろう情報はたくさんありました。
家系図作成に関しては徹底的にこだわる私の性格上、
役所:「戸籍はありませんでした」
私:「ハイ、わかりました」
では終わらせたくありませんでした。
通常よりも時間がかかり、紛失した戸籍に記載されていた事項を完全に把握することはできませんでしたが何とか結果を出すことが出来ました。
しかしながら、戸籍上の届出を確かに受け付けた記録やその届出書が残っており、かつ、当該役所では過去に戸籍を廃棄したことがないにもかかわらず役所にも法務局にも戸籍が存在しないということは結局のところ原因はなんだったのかと今でも不思議に思っています。
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