没日記載のある戸籍
上記は架空の見本用戸籍です。
厚木二郎、厚木花子、厚木梅子の三名が登場します。
ご覧いただきますと、三名ともにこの戸籍では没日が記載されていません。
では死亡記載のある戸籍を取得するにはどうすれば良いのでしょうか?
順次、解説していきたいと思います。
没日記載のある戸籍を入手するための解説の前に、まずはこの戸籍がいつからいつまで効力を有していたのかを確認してみましょう。
この戸籍は通称大正4年式戸籍と呼ばれ、次の戸籍様式である昭和23年式戸籍が登場するまで使用されていた様式です。実際には昭和30年代中頃まで使用されていたものもあります。
大正4年式戸籍を見るにあたっては事項欄の左側から逆ねじ式で読み込んでいくと戸籍が効力を有していた期間が読み取りやすいです。
上記見本戸籍の5をご覧いただきますと「昭和参拾弐年法務省令第二十七号により昭和参拾五年八月八日あらたに戸籍を編製したため本戸籍消除」との記載があり、昭和35年8月8日までこの効力を有していたことがわかります。
では、この戸籍がいつから効力を有していたかというと、上記見本戸籍の2をご覧いただくとわかります。
2には「昭和七年七月七日前戸主一郎死亡ニ因リ家督相続届出同日受付」との記載があり、昭和7年7月7日にこの戸籍が編成されたことがわかります。
(1)厚木二郎没日記載のある戸籍
厚木二郎の死亡記載のある戸籍を取得するにはどのようにすれば良いのかといいますと、この見本戸籍は改製により改製原戸籍となりましたので、昭和35年に編成された後の戸籍を追いかける必要があります。
改製によって作られた戸籍の本籍地に変更ありませんので、1の記載と同様に本籍地:○○県A郡B村大字C参番地に筆頭者:厚木二郎の昭和23年式戸籍を申請することになります。
昭和23年式の戸籍で没日が確認できる可能性は高いですが、転籍などがあった場合にはさらに新しいものを追いかけて取得する必要があります。
(2)厚木梅子没日記載のある戸籍
次に、厚木梅子の死亡記載のある戸籍を取得するにはどのようにすれば良いのか解説いたします。
梅子の身分事項欄には、昭和10年の婚姻により入籍したことしかかかれておりません。(上記見本戸籍の9の記載)
しかし、厚木梅子は配偶者である厚木二郎の改製後の戸籍へと記載されていますので、本籍地:○○県A郡B村大字C参番地に筆頭者:厚木二郎の昭和23年式戸籍を申請することになります。
やはり厚木二郎の場合と同様に昭和23年式の戸籍で没日が確認できる可能性は高いですが、転籍などがあった場合にはさらに新しいものを追いかけて取得する必要があります。
(3)厚木花子没日記載のある戸籍
厚木花子についての解説の前に、戸籍のみなし改製についてお話しいたします。
見本戸籍の4の記載をご覧いただきますと、「昭和参拾弐年法務省令第二十七号により昭和参拾四年四月壱日本戸籍改製」とあります。これはみなし改製と呼ばれる記載です。
昭和23年式戸籍という新しい様式が出来た直後に、全国一斉に大正4年式から昭和23年式戸籍へと書き換えることは不可能です。
そこで大正4年式戸籍のうち昭和23年式戸籍の要件をみたしていたものは、このような記載がなされました。
続いて8の記載をご覧いただきますと、「改製により新戸籍編製につき昭和参拾四年四月壱日除籍」とあります。注目していただきたいのは、その日付です。
みなし改製の日と同日の昭和34年4月1日となっています。
みなし改製された大正14年式の戸籍とするために厚木花子に改製がなされたのか、それとも厚木花子の改製がなされて昭和23年式戸籍の要件を満たすことになったためにこの大正14年式戸籍がみなし改製とされたのか、そこまではわかりません。
しかしいずれにせよ昭和34年4月1日にこの大正4年式戸籍はみなし改製の記載がなされました。
厚木花子についての解説に戻ります。
上記の解説の通り、厚木花子の死亡記載のある戸籍はこの次以降に編成された戸籍となります。
すなわち昭和34年の改製により編成されたもの以降となります。
それではどこに戸籍が編成されたのかというと、まず本籍地については改製によってもかわらないので、本籍地:○○県A郡B村大字C参番地となります。(1の記載参照)
筆頭者はというと、厚木花子であると思われます。
思います、と書いたのには訳があります。
厚木花子の配偶者:厚木一郎が存命であれば筆頭者は厚木一郎です。しかし改製がなされた時に既に厚木一郎は死亡しています。
このような場合には厚木花子が筆頭者となりますが、しかしながらごくまれに厚木花子の配偶者である厚木一郎が筆頭者となって昭和23年式戸籍が編成されていることもあります。
したがいまして厚木花子の死亡記載のある戸籍は、改製によって昭和34年に編成された昭和23年式戸籍以降のものとなります。
昭和23年式の戸籍で没日が確認できる可能性は高いですが、転籍などがあった場合にはさらに新しいものを追いかけて取得する必要があります。
(4)没日記載のある戸籍についての四方山話
先日のことですが、この見本戸籍の厚木花子と似た案件で役所に申請したところ、とてもおかしなことを役所の戸籍担当者から言われました。
役所の戸籍担当者曰く「厚木花子は昭和七年七月七日夫一郎死亡に因り婚姻解消(7参照)しているから婚姻前の実家に戻っており、当庁にて戸籍を探したが見あたらず戸籍の保管はない」と言われました。
続けて「明治弐拾八年八月弐拾八日××県D郡E村大字F壱番地」から入籍しているのだから当庁ではなくE村に申請してください」とまで言われました。
たしかに夫との死別後にお嫁さんが実家の戸籍に復籍することはあります。
しかしその場合には、死亡に因り婚姻解消記載のすぐ後ろに実家へと復籍したことが記載されます。
万が一その記載がミスで漏れてしまったとしても、8には改製により昭和23年式戸籍が編成された記載があり、なおかつその日付をもってこの大正14年式戸籍はみなし改製がなされているのです。
役所の戸籍担当者は自分が正しいと信じ聞く耳を全く持ていませんでしたが、私があまりにもしつこく粘るので、しぶしぶ「もう一度見てみます」と返事をいただくことができました。
そして五分後に電話が鳴り、さらっと「ごめんなさい、ありました」との回答を役所の戸籍担当者からいただくことができました。
さかのぼる戸籍に関しては役所の担当者も精通していらっしゃるかたがほとんです。
しかしながら、さかのぼった戸籍の次に現代へと向かう戸籍を申請する際には役所の担当者でさえ間違うことがごくまれにあります。
そこを見抜くのが本当の家系図作成のプロであると思っております。