本籍地が樺太の戸籍
戦前、樺太にも日本人が居住し本籍を置くことが出来ました。終戦時の人口は約40万人と言われておりますので、家系図作成業務で戸籍申請をしておりますとご先祖様の本籍地が樺太であった場合を見かけることが多々あります。
終戦時、樺太の戸籍はほんの一部だけが日本に持ち帰ることが出来ました。持ち帰ることが出来た戸籍は外務省に現在は保管されております。
しかし、持ち帰ることが出来た戸籍は本当にごく一部だけであります。
本籍地をたどっていると、「昭和○○年○○月○○日 樺太○○郡○○町より転籍」と記載された戸籍は、樺太から転籍後の戸籍です。
この表記が出てきたら下記の外務省のHPを見ていただくと、戸籍が外務省に保管されているかどうかがすぐにわかります。
樺太へと転籍する以前の本籍地が戸籍に記載されていれば、まだ残っているかどうかまでは別として、樺太以前の戸籍も申請することが出来ます。
しかしこれまでの経験から、戦後に樺太から転籍手続きをした場合には、樺太以前の本籍地が記載されていない場合がほとんどであるように思います。
樺太までたどりついたけども、もうそれ以上は絶対にさかのぼれない?
可能性は低いのですが、樺太までたどりついた戸籍よりもさかのぼることができるかもしれない可能性や手がかりがいくつかございます。
一般のかたですとここであきらめてしまう方が多いと思います。
樺太以前の戸籍をさかのぼることができる可能性は低いですが、プロとしてやっている以上は執念をみせて出来る限りのことをしなくてはなりません。
私以外の家系図作成業者の方々も、おそらくはここで諦めてしまうのではなくプロとして可能限りの方法を当然にとっているものだと願っております。
では、具体的な方法はどのようなものがあるのか?どうしたらよいのか?
見本の戸籍を使って解説していきたいと思います。
お名前や地名は架空の戸籍見本です。
戸主:見本一郎さんの身分事項欄を拡大したものです。
昭和22年に樺太から転籍して来られたのがわかります。
しかし、外務省のHPをみていただくと、現在残されている樺太の戸籍は下記の6村だけであることがわかります。
- 大泊郡遠淵村(とおぶち)
- 大泊郡知床村(しれとこ)
- 大泊郡富内村(とんない)
- 元泊郡元泊村(もととまり)
- 敷香郡内路村(ないろ)
- 敷香郡散江村(ちりえ)
すなわち、見本一郎さんの転籍前の樺太の戸籍は、取得できないことになります。
「ご先祖様をさかのぼる戸籍はこれで終わり…」で諦めるにはまだ早いです。
一番右側の記述をご覧下さい。
ここには北海道日高郡で見本一郎さんが出生したことが記載されています。
これは何を意味するのかというと、もしかしたら出生当時ここに本籍地があった可能性があるということです。
この地番を管轄する役所に戸籍の申請をしてみる価値は十分にあります。
見本二郎さんの身分事項欄を拡大したものです。
昭和17年に北海道上川郡で出生したことがわかります。
樺太へと転籍する前にもしかしたらここに本籍地があった可能性は十分ありますので、この地番を管轄する役所に申請をしてみる価値はあります。
見本ウメさんの身分事項欄を拡大したものです。
昭和15年に北海道松前郡よりお嫁に来られたことが読み取れます。
もし、見本家が昭和15年当時にまだ樺太へと転籍していなかった場合、見本ウメさんの婚姻前の杉下家の戸籍には、樺太ではない別の場所の本籍地が記載されています。
昭和15年以前に既に樺太へと転籍していた場合には、ウメさんの婚姻前の戸籍には樺太の見本家へとお嫁に行ったことしかわからず樺太以前の本籍地はわかりません。
樺太以前の本籍地を探す方法をご紹介いたしましたが、これは実際にどれも私が運良く戸籍を取得できた方法です。
必ずしもこの方法で取得できるとは限らず、逆に取得できない可能性の方が高いかもしれません。
そもそも出生地が記載されていなかったり、出生地が樺太であった場合にはそこで終わりです。
またお嫁に来られたかたの嫁入り前の戸籍を取ってはみたものの、樺太へと嫁入りされている記載がある場合にはやはりそこで終わりです。
しかしながら、このような方法もあるということでご紹介させていただきました。
樺太に限らず、さかのぼっている課程で戸籍が滅失してしまっていた場合にも有効な方法でもあります。
ご先祖様の戸籍調査の結果はたとえ同じであったとしても、「樺太までさかのぼったけど、これ以上さかのぼれません」ではなく、私としては「樺太までさかのぼり、さらにあらゆる可能性を模索しましたが、これ以上さかのぼれませんでした」ということを大事にしています。
ご先祖様のルーツが北海道にあるかたにとって、北海道に移住なさる以前の土地というのは気になるものだと思います。
このような事案で途中で諦めてしまった方、もしかしたらさかのぼることが出来る可能性が残されているかもしれません。また、もしかしたら全ての家系図作成業者様がここまでやってくださっていないかもしれません。
今一度、戸籍をご確認してみてはいかがでしょうか。
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